2016年4月27日水曜日

失敗しちゃう心理

4月26日(火)は、無料体験。
先月に続き、めずらしく満員御礼の6名。
講習中に、最近思っていることの1つを、そのまま口にしてしまうことがあります。

「失敗って、失敗する気持ちも分かるなぁ!!!というぐらいの気持ちになれないと、また失敗すると思います。」

典型的なのは、事故事例やらヒヤリハットを勉強するとき。
「自分は怖がりだし、こんなこと絶対しないと思う。」
と思っちゃうと、ダメみたいです。
本日も隣で、怖がりな方がオートビレイを付け忘れるということがありましたしね。

「有りうる!!要注意だ。」というところから、学習が始まると実感します。

本日の例だと、一手一手レストする練習なのに、ガバを持ったらグイグイ引き付けて足を上げてしまうという話。
「狭くなっちゃうから、レストしにくいですよ。」
という実演をしても、ついつい足を上げてしまいます。

この場合、講習生が
“ガバを引きつけてでも足を上げたくなる気持ち”
を、自分で理解して、それを自制しなきゃならないんですね。

本日は、とりあえず本人に「なんで足上げたくなるんでしょうね?」と聞きました。
しかし、私の聞き方が悪いのか、ちょっとリアクションが薄い・・・。
そこで、過去の講習生が語った“足を上げたくなる心理”を紹介したら、ちょっと納得いただけたようで、レスト練習が変化しました。
(次のホールドが届く方が安心、先に進めるときに進みたい気持ち、疲れないうちにという焦り、など)

ちなみに、何度か話しても届かないアドバイスがあるときは、
「そのアドバイス、素直に聞けない講習生の気持ちも、分かるなー。」
というのを目指すべきですよね。

私には、生涯目標の1つでしょう。

2016年4月25日月曜日

マルチピッチリード講習

4月23日(土)、24日(日)は、マルチピッチリード講習にて、小川山。
女性HKさん、女性KIさんの初回です。
<今回初めて使ったライン>

2人とも、初回としては上々の出来でした。

私のイメージでは、4日分くらいの内容。
<スラブ>

マルチ講習、基本の流れ。

①立木で簡単にビレイ点が作れるパターンで、1ピッチのリード&フォロー&懸垂下降の流れを練習。

ここで、ロープワークの考え方や、危険行為について、本人が色々勘違いしていそうなことを修正します。

今回で言えば、
・パワーポイントの理解不足で、ビレイポイントがごちゃごちゃする
・足場の良いテラスで、うっかりノービレイ状態の時間を作ってしまう
・懸垂下降のロープセットで、ロープの落とし止めが無い時間を作ってしまう

などを修正。
<まだまだビレイも緊張>

②ビレイ点作り、地上練習

立木以外でよくあるパターンを2つ。
・カムなどで、複数支点で作るもの。
・ピナクル、巨木などで、メインロープで作るもの。

これの仕組みを、イメージ出来るまで練習。

2点か3点か、流動か固定か、といった細かい議論よりも、もっと個別の支点強度を気にして、リスク分散を考えられるように。
<クラックや立木を繋ぎながら>

③半ば岩稜歩きに近いレベルのマルチで、初登攀ごっこ

デジマルで言えば、5.6~5.7くらい?
ここで、ルートファインディング、下降路の判断を含めた、総合的な練習。
<初日のトップアウト!>

あとは、ここまでの出来次第。

最終段階の④としては、ある程度本気オンサイトトライっぽい傾斜で、初登攀ごっこ。
ここで、敗退判断、ルート変更、軽量化、などの総合的なルートファインディングを学んでいただく予定です。
<初の懸垂トップ>

今回の2人に関して言えば、1日目に①~③までをこなして、まずまずの出来。

「④を課題にしても、完登しそうな予感はある。
とはいえ、2日目も③っぽいルートで練習した方が、着実に経験値が積めそう。」

という私の勘で、岩稜的な傾斜のルートで初登攀ごっこ続編。
<2日目>

結果的には、良かったんじゃないかと思います。

クライミングに余裕があるからこそ・・・

・行きつ戻りつしてルートファインディングできる
・ロープワーク、リスク判断に、集中力の半分くらいを費やせる
・ビレイ点ごとに行われる、私からの指摘に、耳を傾けるゆとりがある
<1P目>

教えたい小技は、まだまだ今回の10倍もあります。
とはいえ、マルチ講習の基本的な考え方は、もう半分くらい分かったんじゃないかと思いました。

意外と(笑)、理解が早い2人です。
ロープワークには、特別強くないのですが。

ショートルート経験が多いので、リード自体はスムーズで、講習テンポが良いのだと思います。
<「めっちゃ楽しくなって来ました!」>

話は変わりますが。

HKさんは、冬にクラック講習卒業にしたときとは、だいぶ発言が変わったように思います。
突破力を付けたいか、山向けのリード総合力を付けたいか、みたいな熱い議論をしたのも、有意義だったのでしょうか(笑)。

その議論自体、答えもないのですが、今はその意味がよくよく分かっていただけた気がします。
<午後に、マルチをもう1本>

もちろん、その話だけじゃなく、全体的な印象です。

あくまで私の印象ですが、ちょっとクライミングに必要な能力が脳内整理されてきたのでしょうかね。
<ダブルロープの扱い>

一方で、KIさんは初日から2日目にかけて、何故か覚醒!

初日は、とにかくビビりまくって、
「オールフォローでも良いです。」
くらいの怖がりっぷり。

ロープワークも、状況判断も、なんとなく分かるんだけど、腑に落ちるまでは今一歩。
初日の初登攀ごっこでは、HKさんが中心に判断する状態。
<5.8くらいの綺麗なクラック>

それが、2日目には、
「オールリードでも良いです。行き先を考えながら登るのって、楽しいですね!」
とポジティブ発言を連発。

HKさんとも、イコールパートナーとして、先々を話しあえておりました。

あまりの変貌ぶりに、私とHKさんは笑うばかり。
<もうすぐトップアウト>

山も岩も、人間変えて行きますねー。

僕自身、考え方の変貌を毎年感じています。
でも、やはり講習生の変化速度はスゴイので、それを目の当たりにすると興味深いですよ。
<ここを終了点とする!>

山の知り合いを増やす会

もう本日のことです。

4月25日(月)に、新宿にて定例の飲み会を開催いたします。
2ヶ月に1回ですので、知り合いを増やしたいという方、知り合いと飲みたいという方、是非是非ご連絡くださいませ。

19時30分に、新宿駅西口改札集合です。
遅れる方は、金の蔵Jr.新宿西口駅前店に直接来てください。

遠方からの頑張り

4月22日(金)は、リード2回目、3回目。
男性STさん、女性UNさん。
当塾では、土日は基本的に外です。
クライミングなら岩場、あとは登山。

ですから、ジム講習は平日に実施。
これだと、ランナウトに平日に来られない方だと、なかなか続けられません。

もともと経験がある方であれば、岩場リードからの参加も応相談。
同じように、6時間コースであれば、土日のジム講習も応相談です。
そんな中、今回はSTさんがジムリード講習の卒業まで行きつきました。
(UNさんも、ジムリードは卒業といたしました。)

もともと、岩場リード講習を受けたくて来たのに、最初はジムで6時間コース×3日間。
有給休暇を使ったりして、とても根気よく続けてくださりました。
どうも、ありがとうございます。

初回はムーヴLv.0、次はムーヴLv.0とリード1回目、今回がリード2回目と3回目、という流れです。
とはいえ、本人も自分の不十分さは百も承知。
「(ビレイも、登りも)こんなんで、良いんですか?」
という発言です。

もちろん、今後も岩場リード講習で補っていこうとは算段しております。
リード3回目を復習受講したり、ムーヴ講習に御参加くださるのも良いと思います。

過去にバリエーションをやっていて、危ないとか伸びないとか感じるものもあったSTさん。
岩場の講習が始まると、きっとまた楽しいと思いますよ。

2016年4月24日日曜日

地図が気になる、お年頃

4月21日(木)は、登山入門にて、奥多摩の大岳山。
女性MSさん。
研修のため、ガイド仲間のKMさんが同行。
<御岳山>

講習後に、入山時の講習生の様子を思い出すと、ビフォーアフターを感じます。
<ちょっとした岩場>

序盤に出た質問で、
「休憩は、どのくらいで取るものなんですか?」

私からは
「普段どうしているんですか?」
「本当は、どのくらいが良いと思っているんですか?」

と一応確認してみます。

本人は、
「ザックを下ろすのは山頂だけ。」
「ちょっと、休憩しなさ過ぎだとは思ってます。」
との回答。
<大岳山>

それから、
「山の入門書だと、1時間に1回、5分~10分とか書いてあるのが多いですね。一応、それをセオリーだとして、あとは状況に応じてアレンジですかね。」
くらいの常識的な話を少々。

あとは、本人が取り入れているという、立ち休憩(ザックを下ろさず休む)、立ち止まって息を整えるだけの一呼吸、について話を聞いたり。
<山座同定も、ちょっとだけ>

また、地図の読み方にも興味津々なMSさん。

「休憩中に地図を見て、次はどの辺で休もうとか考えることが多いです。地図上で現在地が分かりやすい場所だと、またそこで地図を見るときに分かりやすいですね。」

なんて言ったら、すごく納得してくれました。
<海沢大滝>

しかしながら実際には、登山序盤は私が指示しないと地図を開かなかったり、先のことを考えずに歩き始めるような雰囲気。

「なかなか、習慣化しないものですかねー。」
などと話していました。
<「顔出しはチョット」>

ところが、下山で講習生に先頭を歩いてもらっていたところ、下山で登山道の分岐に自信が持てなくなるというプチトラブル発生。
※下山は、海沢探勝路という点線ルートなので、標識も少なく、あまり整備もされていない。

そこで、いつものように私が黒子になっていたら、本人なりに地図とにらめっこ。
1つ前の分岐まで引き返し、「ここしか考えられない!」という思いと、「とはいえ、標識がないと不安。」という錯綜した思いの中で、分岐を右折。
すると・・・ですよ。

休憩中どころか、歩きながらも数分に1回は立ち止まって地図を確認しはじめました。
また、休憩中も地図が気になって仕方ない!!!

※実際には、ずっと道は合っているのですが、それを確認し続けたい気持ち。

お菓子を片手に、地図を熟読するという夢中っぷりで、こちらも嬉しくなります。
<沢を横目に>

下山後に話を聞いたら、
「点線ルートこそ、1時間に1回くらい意識的に休んだ方が良いですね。道を探したり、気持ちが焦るんで、じっくり落ち着く時間が必要だと思いました。」
ですって。

休憩の意義までつながって理解できたみたいで、花丸の出来です。

他にも、行きには質問だったことが、下山中には当たり前だったことが何点か。
質問に誠実に答えることは大事なんですが、やはりプチ体験させるのが分かりやすいんですねー。

2016年4月23日土曜日

意味ある反省を心掛ける、リターンズ

4月20日(水)は、クラックリード講習にて、湯川。
男性ONさん、女性IUさん、復習参加の女性ARさん、復習参加の男性NSさん。
<ジャミング練習>

ルートが登れなかった際に、色々と思うところはあるでしょう。
そして、それをパートナーに、ついつい話してしまうものです。

その感情、少し整理してみませんか?
<ボルダー練習>

①登れなかった理由(難しさ解説編)

「あそこが悪くって!」
「足が細かくって!」
「プロテクションが難しくって!」
「ちょっとランナウトしているのが怖くって!」
などなど。
<ポカポカ陽気>

②登れなかった理由(反省編)

「あのホールド、こう持てば良かったかな。」
「もっと、右から行けば良かったかなぁ。」
「プロテクション、ミスったかな。」
「判断が遅すぎて、疲れちゃったかな。」
などなど。
<カムセット練習>

③自己否定

「クライミングに向いてないのかな。」
「もう辞めた方が良いのかな。」
「修業が足りません。」
などなど。
<デゲンナー>

④自己否定を避けるための方便探し

「このルートで5.8なんて、辛いよー。」
「ボルト間隔、遠すぎて良くない。」
「このルート、なんか変なムーヴじゃない?」
「クラックなんか登れなくっても、山は登れるよ。」
などなど。
<大和屋>

この中で、もっとも価値があるのは②ですよね。

ただ、正直に告白すれば、私も①、③、④を全部言いますよ。
「生産性のない会話だけど、聞いてもらうと気が楽になるかな。」
という気持ちもあります。
<フォーサイト>

ちなみに、なんですが。

③ばっかり言っているようだと、クライミングを続けるのがツラくなります。
④ばっかり言っているようだと、周りから「言い訳野郎」のレッテルを貼られます。
<無名フィンガー>

①は、言い方によるんですかねー。
愚痴みたいに話されると、聞いている方も面倒になります。

ジムの常連さんなんかは、
「あれ、悪い!!!」
と満面の笑みだったりします。

全く出来そうもない課題だと、つまらないけれど、なんとかなりそうな悪さってのは魅力的なのです。
①を喋っているんだけど、②を思うクライマー心理ってところ?
<ハンドジャムが初めて効いて、ニヤリとするIUさん>

登れない課題を楽しげに語れることは、クライマーとしての精神性に一歩近づくことなのかもしれませんね。


具体的な講習内容
・ハンドジャム練習(馴染ませる、膨らませる力は最小限に、など)
・方向を変えないように引き付ける練習
・フィンガージャム練習
・足の移動(ダイナミックかスタティックか)
・上体を起こした姿勢、懐を開いた姿勢(腰を入れるか否か)
・地上でのカムセット練習
・リードで落ちる練習(ARさん、NSさん、ONさん)
・トップロープでの練習(IUさん)
・実践本気トライ
ARさん:フォーサイト(5.10a/b) ハングドッグ練習。無事ムーヴ解決して、トップアウト。
NSさん:無名フィンガー(5.9?) テンション数回。判断ミスしなければ、オンサイト出来てたっぽいので、惜しまれます。
ONさん:草餅(5.8) 敗退。オンサイトトライにて、ライン、ムーヴ、カム戦略の全てに迷うこと多数。判断することが多いので、ムーヴ能力以上にそれが試されたように見えました。

2016年4月19日火曜日

つながってます

4月17日(日)は、クラックリード講習が中止にて、ロープワーク講習。
もともと参加予定だった女性MMさん、新規女性MTさん、加えて男性FKさん。
本日の講習生から、一言。


「フリーとアルパインを分けて考える人もいるけど、繋がっているんじゃないかと。
マルチはフリーを繋げたようなものだし、アイスもフリーみたいな感じだし、冬山もアイスを繋げたような感じじゃないですか?
しかも、落ちちゃいけないかどうかで分ける人もいるけど、フリーも落ちちゃいけないじゃないですか?」
100%賛成はできませんけど、本質を突いてて面白いです!
もともと、フリークライミングってジャンルじゃなくて、スタイルを指す表現です。

中上級者の傾向としては、マルチであろうと冬山であろうとフリークライミングの対象として見る人が多いと感じます。
単純に、エイドよりフリーの方が面白いので、山であろうとフリーで登りたいというのは自然でしょう。

もはや、“フリーの岩場”という表現自体が古臭いのかもしれません。
(私も、たまに使っちゃいますが。)

敢えて言うなら、ショートルートでしょうか。
(マルチとの対比表現として)

“クラッグ”なんていう表現もありますが、これは将来一般的になるでしょうか?
一方で、山もショートルートも、フリークライミングの対象として見るにしても・・・。
スキルが違う部分は、否めません。

・山は、落ちちゃいけない場面が多いのは確かです。
・山は、リスク判断、ロープワーク、その他もろもろの山ヂカラが要求されるのも確かです。
・山は、エイドで登ったとしても、それはそれで完登とみなしたりするのも確かです。

御本人が、どこまでそれを意識していたかは分かりませんが。
とはいえ、ロープワーク講習に御参加くださるあたり、安全管理への興味も十分だと思います。

スポーツ要素と冒険要素、うまく噛み合わせて上達してくださることでしょうね。
具体的な講習内容
・ロープの畳み方を洗練
・スリングの収納、アルパインクイックドローの作り方を洗練
・ショートルートの終了点作業練習(MTさん)
・仮固定、懸垂下降のバックアップ、登り返し(FKさん、MMさん)

実際には、この中でリスク分散や、手際向上について、色々と講習しております。
ところで、4月19日(火)に、荻窪のワイドクラック登れました。
通算3日間、50トライ以上。
嬉しいっす。

体感は、5.11b?
昨年登った、摩天楼(5.11a)、土竜(5.10d)よりは、ムーヴ的には難しく感じました。
めちゃくちゃ安全で、プレッシャーゼロですが(笑)。
ボルダーグレードだと、よく分かりません。

ちなみに、まによんさんも、直後に完登。
しかも、半袖半ズボンという、フリークライミングの真髄のような服装で!!!

3mのジムボルダーも、越沢バットレスのような本チャン顔負けの初登攀ごっこも、全ては繋がっているのでしょう。

2016年4月17日日曜日

発想

4月16日(土)は、マルチピッチリード講習にて、越沢。
男性SRさん、男性FKさん。
<オブザベタイム>

発想の理解、というのは将来性を見る1つのポイントだと思います。

以前より私の卒業要件が厳しくなったとすれば、ここかなと思います。
<まずは、易しいピッチでシステム復習>

本日、他パーティに講習内容を説明する機会がありました。

若くて、やる気ありそうな人が、
「せっかくだから、リードの人が何を考えながら登っているか教えてください!」
という熱い質問を投げかけて来まして(笑)。
<懸垂下降>

「初登攀のつもりで登ってもらっているんで、オールナチプロで(ハーケン打ちはアリだけど)、トポも見ないでオンサイトトライです。」

「常に敗退できるか考えながら、レストしてムーヴやプロテクションを探って、ルートファインディングしているんです。今の場面では、具体的に・・・・。」

「立木はアリですよ。ビレイポイントも、自分で作ります。ちなみに、今回は渋滞を作らないために、立木は避けて隣の壁でカムで作ってくれるように、私が指定したんですが。」
<オンサイトトライ、1ピッチ目>

すると、その若いクライマーの感想は・・・
「開拓者って、そうやって登っている訳ですよね。5.11とかでも同じなんでしょうか?」
<ハンギングビレイ>

一方、その若者を連れて来ていた先輩は・・・
「色々ルールを作って、色々な課題練習をしているんだね。」
<2ピッチ目>

これは、1年後の成長差は歴然でしょうね~。

ただ、先輩の方も
「今度、三ツ峠で(一番易しいルートで)オールナチプロの練習してみっかな。」

なんて言っていたので、色々試そうという気持ちはありそうでした。
現時点では、カムをセットしてみるくらいの感じでしたが。
<だいぶサマになってます>

同じように、

“初登攀ごっこ”は、無謀な突っ込みではない。

という発想を、どのレベルで理解できているかが気にかかります。
<コーナークラック>

過去の卒業生10人くらいの中でも、その後の記録を見ると、ちょっと突っ込みすぎなオンサイトトライだなと見えたものもあります。

一方で、
「山では、残置を使うのも、フリーを諦めるのも、限界ルートの安全のためなら何でもアリ。」
という方向に走ってしまう人もいます。

何度も言いますが、残置を使うのが絶対悪でもないし、エイドも絶対悪ではないのですが、発想を勘違いしているとダメだと思うという話です。
<3P目の斜上クラック>

こういう話を聞くと、私の講習ミスも否めません。

「初登攀ごっこを、リスクを取り過ぎずに楽しむ。」

その発想が理解できるまで、もっとお付き合いするべきだったのではないか?
そんな反省の念に狩られます。
<落ち着いてリードするSRさん>

ただ、自力でその境地に至った卒業生も何人もいます。
もちろん、何度か失敗を繰り返した後に、という話です。

初期の頃の卒業要件が、
「基本的な初登攀ごっこのシステムは分かったし、そろそろ自力で1本か2本トライして欲しいな。」
というレベルでした。
それを考えると、本人の努力の賜物でしょう。

今よりも、敗退シナリオや危機回避の発想については、厳密に話してはいませんでしたし。
<今回は、明るい(笑)>

どこまで教えるべきで、どこからは自力で考えるべきか。
発想は、自力で盗むべきものか、指摘されないと気付けないものか?

最近、私にとっては重大な関心事です(笑)。
<完登!>

さてさて、本日でSRさんは、マルチピッチリード講習を卒業といたしました。

SRさんは、岩場リードの頃から敗退シナリオは得意分野だったので、マルチピッチの発想理解はさすがでした。
とはいえ、クライミング能力的にギリギリだったこともあり、実際のリード中の判断が良くなって来たのは、ごく最近です。

かなり安定して来たので、平日の三ツ峠あたりで、講習で使わなかったラインでもオンサイトトライしたら、相当楽しめると思いますよ!
<明るいうちに降りられました>

クライミング能力も、ロープワークも、現場判断も、そして考え方も、また少しずつ腕を磨いてくださいませ。
マルチ講習卒業は1つの区切りですが、ときどき講習に来て下さるのも良いでしょう。

「ルート名を付けるとしたら?」という問いには、
“越(こい)の花道”
だそうです。