2015年8月20日木曜日

山からの“お仕置き”

8月18日(火)、19日(水)は、自分の山行にて、奥利根の楢俣川流域(至仏山の西面)。
ちょっと楽しくなってきた、1人沢登りにて。
<2~3時間のアプローチ>

今回は、大失敗の数々をやらかしまして、見事に敗退してきました。

あまりに色々あったので、日記風に綴ってみます。

<ならまたダム>

1人で沢登りに行くのは、直前中止が出来る気楽さがあります。
ただ、どうしても準備が雑になるのが、私の悪い癖。

今回も、前日の月曜に、地形図購入しようとするも、例によって近所の本屋には東京近郊のものしかありません。

「今回の沢は、林道から直接入りそうな狩小屋沢だから、間違わないっしょ。」
「沢自体が小規模だから、支流に入っても、ヤブ漕ぎが多めになるだけで、至仏山の山頂付近には出られるっしょ。」

という見込みで、『山と高原地図』だけで入山することに。
<入渓>

んで、遡行図は自宅でチラ見した程度。

「1人でも、ロープ無し通過できそうな滝ばっかだな。」
「アプローチ3時間、遡行時間3~5時間ってとこか。」

という点だけ頭に入れて、遡行図は持たずに出発。

(これは、意図的に。そうした方が楽しいと思うので。)
<小滝を越えて行く>

が、車を置いて林道歩くこと2時間強。
入渓点で、いきなり迷います。

『山と高原地図』では、林道マークだったのが、実際にはラスト30分が荒廃した登山道。
しかも、ヤブ満載で、現在地の特定しにくし。

「1回目に、この踏み跡が渡渉する沢が、目的の狩小屋沢だよね。」
という考えで入渓です。

この時点で、午前11時。
<おだやか>

あとは、予想通りの易しい渓流・・・。

なんだか、地図で予想するよりも支流がやたら水量豊富です。
「尾瀬だから?湿原だから?」

なんて理由づけするも、2時間歩いても、沢が平坦なまま。
「うーん、この辺から等高線が急になって来るハズなんだけど・・・。」

しかも、左右から30分おきくらいにバンバン支流が。
「うーん、もしかして狩小屋沢じゃなくて、楢俣川の本流に来ちゃった?」

とは思うものの、地形図用の規模感覚しかないので、『山と高原地図』だと今一歩判断に自信が持てず。
<雪渓は、少なめ>

「まぁ、多分合ってるでしょう。間違ってても、同ルート下降は出来るし。」
という考えで、5時間ほど遡行して16時。

いよいよ、水流も無くなり、ヤブ漕ぎ突入です。
「いやしかし、結構ハイスピードで5時間歩いてる気がする。だとすると、随分距離感が違うなー。」

ただ、過去にも『上越の谷105ルート』の参考タイムを激辛と感じたこともあるので、
「本格志向の沢屋さんは、強いのかねー。」

と思いながら、水を汲んで稜線を目指します。
「この分じゃ、17時トップアウトかな。
隣のヘイズル沢を下降開始して、18時前に幕営開始かぁ。
1人なのに、ずいぶん遅くまで頑張っちゃってるな。」

とか思いながら進むも、見る間にヤブが濃くなっていきます。
背丈は越え、密度はジャングル的。
進むペースは、胸ラッセルよりも遅いという始末。
<ヤブ、手の甲も腫れ始めて>

さらに、夕方が迫り、ブユの大群が襲来。

私は、体質的にブユに強いのか、刺されても数時間で痒みが引きます。

だから、これまで
「不快だなー。」
くらいの認識で、防虫ネットも持たずに登っていました。

ですが・・・

本日のブユは、立ち止まって休憩しようものなら100匹以上が全身を覆います。
気が狂うほどの痒さで、振り払っても数が多すぎます。
しかも、歩こうにもヤブが濃すぎて、ブユの餌食!!!

気合いで稜線っぽいところまで登るも、嫌な予感通り、登山道はありません。

そうしているうちにも、さらにブユの数は増え、顔は浮腫み、唇は腫れ、思考するために立ち止まることすら許されず。
蜂に襲われて死にゆく熊、が連想されます。
<とりあえず、水流のあるところまで!>

「こりゃダメ!」
と、17時に敗退決定。

「とにかく水流があって、少し開けたところまで。」
と、ブユを避けるように18時までヤブを下降します。

ちょっとした崖でも、ルーファイを考えるために立ち止まろうものなら、ブユの餌食になるのです。
<戦い明けて、朝>

で、ブユに襲われながらも、明るいうちにツエルト設営。

そこから、焚火にトライ。
が、薄暗いヤブで、ブユに襲われながらでは、薪拾いも上手く行かず。

最終的には、薪をガスバーナーで炙って、煙だけでも出します。
そうすると、何故かブユが近づきません。
やっぱ、固形燃料も持ってくるべきでした。

ただ、その見返りに、ガスは無くなります。
夕飯は、非常食のカロリーメイト少々と、インスタント味噌汁の味噌を生でかじる始末。
<着けられなかった焚火>

ただ、夜も更けて来ると、ブユが減って来るのが救いです。

寝ている間は、ヘッドライト最弱にして、自分から離れた場所に置く作戦。
これは上手くいって、寝ている間は無事に刺されず。

良い感じに熟睡できました。
<ブユに襲われながら張った、ツエルト>

朝はブユが少なく、天国です。
朝食は、寝る前にアルファ米を水に漬けておいたので、一応ちゃんと食べられます。

とにかく、今の装備で再びブユに襲われるのが怖いので、起床後50分で出発できちゃいました。
<下降>

水の流れが強くなる中流では、ようやく普段の沢歩き。
行動食の素甘をかじりつつ、のんびり下降です。
<これが狩小屋沢出合のようだ>

下降中に、初めて人(その人も単独)にすれ違い、ちょっと行程について話をば。

狩小屋沢で間違ったのか、入渓時点で間違ったのか、判断できなかったので確認になりました。
どうやら、楢俣川の本流を遡行して、ススケヶ峰の近くの稜線でブユに襲われていたようです。

我ながら、アホっぽい。
沢歩きとしては充実したけど、もし遭難したら遺体捜索に苦労しただろうなぁと。
なんせ、計画書の沢と違うところに居たわけですから。

昼12時に林道に到着し、再び2時間強で車に戻ったのでした。
<再び、ならまたダム>

反省点
・やっぱり、地形図は持とう。アプローチで、林道が『山と高原地図』とチョット違っているだけでも、細かい地形が知りたくなる。
・ブユ対策は、奥利根では命にも関わる。防虫ネットなどの装備だけでなく、ヤブに突入する時間帯も戦略のうち。
・固形燃料も、持とう。焚火は、ブユ対策にもなるので、必死に焚火を求める状況も起こりうる。
・熊よけ鈴、あった方が良さそう。単独だと不安で、声を発しながらヤブ漕ぎする場面多数。
・奥利根のヤブ、恐るべし。トレースが少ない沢に行くときは、それなりの覚悟を。

他にも、猛ヤブで沢タビが破れたり、なかなかハードでした。

今回やった失敗は、なんだか山に“お仕置き”されている気分。
本当に、良い勉強でした。

行動記録
 8:30 出発
11:10 入渓(ヘイズル沢出合より少し上流の、踏み跡が沢を渡渉する地点)
16:00 ヤブ突入
17:00 敗退決定
18:00 幕営開始
21:00 就寝

 5:50 起床
 6:40 出発
12:00 ヘイズル沢出合
14:25 車に到着