2012年4月14日土曜日

甘効きのプロテクション

4月12日(木)は、越沢バットレスにてマルチピッチのリード講習。
常連女性TZさん。

マルチピッチの現場で、「プロテクションがバチ効き!」という状況は嬉しいものです。
カム、スクリュー、木、岩角、いずれにせよ。

初級者でもホッと一息つけるでしょうし、ベテランならばフリークライミングのようなムーヴにチャレンジ出来ちゃうでしょう。
その一方で、「これ効いてんのかなぁ?」というプロテクションを決めることも多々あります。
「たぶん止まるだろう。たぶん・・・。」と思っているものから、「気休めかも?」と気付いているものまで、効き具合は様々。

いわゆる甘効きのプロテクション。
妥協案とか、苦肉の策とか、そういうイメージです。
「甘効きのプロテクションでも、取らないよりはマシ」
と、僕が初心者の頃に読んだ本には書いてありました。

さらに、
「たとえ止まらなくても、墜落速度を緩めてくれるかもしれない」
なんて書いてありました。

つまり、落ちる確率が変わらないなら、取った方がベターだという話。
だから取るんですよね。
が、個人的な経験としては、色々と弊害もありました。

①そのプロテクションより、少し上に登ると、ロープがクリップされていることに妙に安心してしまう。
(気休め効果が、効き過ぎてしまうことが多々!甘効きであることが、記憶から薄れる。)

②甘効きのプロテクションだと、1つでは不安なので、核心部の前などでは何個も必要になる。
結果、ギアを大量に消費する。

③一度、甘効きのプロテクションを多用し始めると、本当はバッチリ効きそうな場所でも、甘効きで妥協する癖になることがある。
(これは、初級者に多い。クラックゲレンデなどでは、超危険!)
ほとんど、心の罠ですね(笑)。

使うときは、十分気をつけましょう!
で、何を気をつけるのか?

例えば・・・
・甘効きのプロテクションの後に難しいときは、慎重に登る気持ちや敗退する勇気を忘れずに!
・ギアが足りなくなるくらいなら、バチ効き以外はなるべく取らないようにするなど、ランナウトする割り切りも必要
・登りながら、バチ効きの場所を、絶対に見落とさないように大事にする
今回TZさんは、甘効きのカムを決める場所探しが本当に上手くなりました。
そして、その代償に、1日の後半戦はこの罠にハマりまくり!

多くの人が通る道ですから、仕方ありません。
ただ、ビレイしている私は冷や汗もんですが。
技術というより、精神論みたいで申し訳ないです。
ただ、こういう心の罠みたいなのって、山ではメチャクチャ多いですよね。

実際の危険度と、恐怖心がズレている例。
安全だけど怖い、危ないけれど気付かない・・・。

ヒヤリハッとを繰り返して、実践経験を積む、というのも「ぶっちゃけた話ですが」必要。
でも、ヒヤリハッとですら減らしたい慎重派は、こういう話に耳を傾けて頂ければ幸いです。
具体的な講習内容
<練習内容>
・Ⅲ級ピッチを2回登って、リードの確認
・一般ルート(3ピッチ、Ⅴ級下)をオールリード
・左ルート(2ピッチ、Ⅴ級)をオールリード

<講習内容は、実践でのアドバイス>
・ロープの流れのための、スリング調整の目安
・ビレイポイントの作り方を修正していく
・ロープの引き上げのコツ(1本ずつ引く、など)
・甘効きのカム
・ランナウトしている場合の敗退判断
などなど
TZさん。
今回の収穫は、かなり多かったと思います。

・甘効きのカムを探す目が培われた(その後、心の罠にハマる経験も積めた)
・実践中に、ハーケンを何本も打てた
・初めてⅤ級をリード出来た
・厳しいピッチ、難しいビレイポイント作成中でも、パニック状態にならなかった

下の写真は、初めてのⅤ級“左ルート”!
ところで・・・

アルパインクライミングを講習するって、本当に危ないと思います。
思い出して書いているだけでも、胸が苦しくなるくらい。

気をつけて励みます。