2012年3月29日木曜日

ムーヴ習得の過程(落ちるまで頑張る理由)

3月28日(水)は、湯河原にて岩場講習。
今回は、常連女性ODさん、KMさんのペア。

梅が見頃でした。
こんな日に、湯河原幕岩が混んでいないなんて、平日ならではの幸せです。
スポーツクライミングでは、「落ちるまで頑張れ!」と言われます。

もちろん、そうした方がスポーツとして面白いからというのが一番の理由です。
落ちる前に自ら諦めるのは、イマイチ燃え尽きませんからね。

しかし、もう一つ。
「落ちるまで頑張るくらいでないと、上達しない」
というのもあります。

これは、単なる精神論ではありません!
ちゃんと、クライミングのスポーツ特性に合った理由があります。

ちょっとマニアックですが、今回はそれをご紹介。
(詳しく知りたい方は『パフォーマンスロッククライミング』を読んでください)
まず、クライミングのムーヴというのは、限られたホールドで「バランスをどう保つか?」というものです。

それが、
「(とりあえず出来るけど、)より省エネ!」というときもあれば、
「(こうやってバランスを取ったら、)初めて出来た!」(ムーヴ解決)というときもあります。

前者は、落ちなくても練習できます。
5.8以下を「どうやったらもっと楽かな?」と、しつこく登れば良し。
講習を利用したら尚良しです。

ただ、後者は初めて成功する際に
「落ちそうだったけど、案外出来た!」
という経験を最初にすることになります。

それが、1回目で落ちずに出来ることもあります。
また、4回は落ちて、5回目で「おおっ、出来た!?」というときもあります。
で、この経験というのが、頭で記憶するというよりも体で覚えるものです。

この経験値が多いクライマーほど、よりバランシーなムーヴをこなせる引き出しが増える、という仕組み。
つまり、過剰に恐がりなクライマーは、安定感や省エネ技術は伸びるが、グレードは伸びない、という訳です。
ちなみに、この経験値というのは、忘れやすく、ストレス(パンプ、緊張、など)にも弱い。

そこで、出来たムーヴは反復練習するのがベターです。
そうすることで、その経験が体に染み込む。

この反復回数、もちろん多ければ多いほど厳しい状況で再現出来るようになるのですが、現実的には数回~10回程度がオススメ。

理由は

・個々のムーヴは、腰を壁に近づけるなどの一般原則や、ヒールフックなどの名のあるムーヴとは違い、無数にある。そして、それを数多く体に染みこませる必要がある。
(イメージとしては、筋力アップ抜きで1グレード上げるならば100個とか。)
そこで、ムーヴ解決力だけを主眼に置いて、僕はこんな感じでジムで練習しています。。


①数多く練習するため、ルートよりもボルダーをやる。

②ギリギリ1撃、もしくは10回以内に出来るようなムーヴが出てくるような課題をやる。

③それを下から全て繋げる(完登する)だけで、10回以上トライするようなら、十分に反復したと見なして次の課題へ。(かなり、滑らかに動くことも意識したはず)
逆に、1,2回で繋げられてしまうくらいなら、そのムーヴの練習の意味でも、もう1回だけでも再登しておく。(1回目よりも、滑らかにこなすことを目標に)

④これを、1日に10本くらいのボルダーで出来れば、最も理想的。(丁度良い課題を探し出すことが、最も重要)

⑤たとえ完登できなくても、課題の中に、このトレーニングに向いた“部分”があれば、トレーニングとしては十分に効果があったと自分に言い聞かす。
これは、かなり高度な練習意識です。
初級者には、難しいかもしれません。
が、丁度良いレベルのボルダーを数多くやるだけでも、これに半分くらい合致します。

しかも、これって登るだけで意外と筋トレになりますよ。

この前後に、ウォームアップでフォームを意識したり、持久力トレーニングを追加したりしなかったり、それが僕のジムでの自主練習方法です。

ムーヴ解決力向上の道は、地道さあるのみ。
ただ、落ちるまで頑張れないと、その一歩自体が歩けないことが分かったでしょうか?
具体的な講習内容
・岩場で脱力の復習(ジムよりも、緊張しやすいので)
・ボルトの種類
・ムーヴの練習になるレベルのルートにトライ
(1撃できるくらいのルートを反復、落ちる気で頑張らないと不可能なムーヴ)

今回は、全てトップロープ講習。

普段は、持久力とか省エネ技術ばかりのクライミング講習ブログです。
が、最近ODさんがかなり省エネレベルが上がってきたので、次はと欲張ってみました。